※この記事にはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト)を含みます。
アニメ『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』、最終回まで見終わりました。
最後の数分で「え、ここで終わるの?」と声が出て、そのあとに「これは第2シーズンあるやつだ」とひとりでうなずいていました。夜中に。北九州のワンルームで。
ストーリーの感想はいろんなサイトで書かれているので、わたしは別の話をします。
このアニメ、スーパーの裏側が本物すぎるんです。
学生時代、わたしはスーパーのレジにいました
大学の4年間、地元のスーパーでレジのアルバイトをしていました。
お客さんから見えるのは、レジと売場と、せいぜいサービスカウンターまで。でも働く側にとっての「職場」は、あの「関係者以外立入禁止」のスイングドアの向こう側です。段ボールの匂いがして、蛍光灯が少し青白くて、売場より2〜3度寒い場所。
ヤニすうを1話から見ていて、わたしはずっと「この絵を描いた人、絶対あのドアの向こうを知ってる」と思っていました。
1話の搬入口で「あ、知ってる場所だ」となった
佐々木さんと田山さんがタバコを吸っているのは、スーパー裏の商品搬入口です。
ここの描き方がまず細かい。
- 商品を運ぶ台車が、使い終わった順に適当に寄せてある
- 搬入口のそばに自販機がある
- 喫煙スペースが、外から従業員の姿が見えないようにパーテーションで仕切られている
3つ目、見落とした人も多いと思います。でもこれ、実際のお店でもすごく気をつかうところなんです。制服を着た店員がタバコを吸っている姿がお客さんの目に入ると、それだけでクレームの電話が来ることがある。だから喫煙場所は「裏の、さらに見えない場所」に追いやられて、仕切りで隠される。
あの仕切りがあるから、佐々木さんと田山さんの時間は「誰にも見られない場所」になっているんですよね。物語の設定と、現場のルールがぴったり重なっていて、1話の時点で鳥肌が立ちました。
10話、店長の後ろに映っていたもの
いちばん「うわっ」となったのは10話です。
店長がクリスマスの売上を報告している場面。ふつうに見ていたら、話の内容に気がいくシーンです。でもわたしの目は、店長の後ろに釘づけでした。
トランシーバーが充電器に並んで刺さっていたんです。
あれ、本当にあるんです。売場のスタッフ同士が連絡を取るためのトランシーバー(インカム)は、閉店後や休憩中にバックヤードでまとめて充電します。充電器にずらっと並んだ光景は、働いていた人にとっては「毎日見ていた壁」そのもの。わざわざ背景に描き込む必要なんてないはずなのに、ちゃんとそこにある。
カメラはそのあと、バックヤードから搬入口に出るスイングドアを映します。その左側に、サニタリー置き場。洗剤、消毒用アルコール、次亜塩素酸の容器が並んでいる棚です。
ここ、置き場所にちゃんと理由がある場所なんです。
- 売場の食品とは絶対に混ざらない場所に置く
- 搬入口やバックヤードの動線上で、すぐ取り出せる位置にする
- 塩素系と酸性の洗剤は混ぜると危険なので、並べ方にも気をつける
取材の写真をなぞっただけの背景だと、「洗剤っぽいボトルが並んでいる棚」になります。でも10話のサニタリー置き場は、毎日誰かがそこから取って、そこに戻している棚に見えました。使われている感じがする。そこまで描ける人は、現場に立ったことがある人だけだと思います。
店内はみんな知っている。でも裏側は働いた人しか知らない
スーパーの売場は、誰でも知っています。レジの並びも、特売のPOPも、お惣菜コーナーの夕方の値引きシールも。だから店内のシーンがリアルなのは、ある意味当たり前です。
でもバックヤードは違います。お客さんは一生入らない場所です。そこを「それっぽく」ではなく「そのまま」描いているから、元バイトのわたしは毎週ドキッとしていました。
調べてみたら、作者の地主先生には接客販売の経験があって、それもスーパーを舞台に選んだ理由のひとつだったそうです。やっぱり、という気持ちでした。
そもそもこの作品、「レジでにこにこ接客する山田さん」と「裏でタバコを吸う田山さん」が同じ人、というお話です。レジに立っていたわたしには、ここがいちばん刺さりました。
レジの顔って、ちゃんと「つくる」ものなんです。お客さんの前では声のトーンをひとつ上げて、口角を上げて。スイングドアを抜けてバックヤードに入った瞬間、ふっと顔が戻る。あの切り替えを毎日やっていたから、山田さんと田山さんの二つの顔は、わたしにとって作り話には見えませんでした。
最終回を見終えて
最終回、終わり方がずるかったです。きれいに閉じるのではなく、「この先も見たい」と思わせる場所で止める。第2シーズン、期待していいと思っています。
それまでは原作を読み返して待つつもりです。アニメで背景に気づいてから原作を読むと、コマの隅に描かれている台車や棚にも目がいくようになって、もう一度楽しめます。
学生時代にスーパーで働いたことがある人。今もレジに立っている人。ぜひもう一度、背景を見ながら見返してみてください。きっと「あ、うちの店にもあった」が見つかります。
